飲食店では「粗利率が大事」って聞くけど、粗利率って何?
粗利率を上げて儲けるためには、どうすればいいの?
こんな疑問にお答えします。
この記事を書いている僕は、
- 飲食業界歴15年以上。
- 今も飲食店の現場(居酒屋)で、現役サラリーマン中。
- 飲食業界の粗利率が60〜70%と言われる中、常に75%程度の粗利率でお店を営業しています。
今回の記事では、
- 飲食店の粗利率とは?
- 粗利率を上げるためにやってはいけないこと
- 飲食店が粗利率を上げて稼ぐためのロードマップ
を解説します。
本記事の結論ですが、
粗利率を上げるためには、「原価が安い商品を、大量に売る」
これが答えです。
以下で、解説していきます。
飲食店の粗利率とは?
粗利率は、売上に対する「粗利益」」の割合
売上高に対して粗利益が占める割合を「粗利率」と言います。
粗利益: 粗利益=売上高-原価
営業利益: 営業利益=粗利益-販売管理費
売上高に対して粗利益が占める割合が「粗利率」です。
飲食業界では、粗利率が60~70%、営業利益率が5~8%が平均と言われています。
僕のお店は、だいたい粗利率75%程度で営業しています。
粗利率75%ってたいしたことないのでは?
と思われるかもしれませんが、金額が大きくなれば大きな差になります。
例えば1ヶ月で500万円の売上があるとします。
粗利率60%だとしたら、粗利益は300万円。
一方、僕のお店は75%なので、375万円。
1ヶ月で75万円の差です。
1年で考えると、900万円の差です。
かなりの金額だと思いませんか?
粗利率を上げるにはどうすればいい?
粗利率を上げる方法は、2通りしかありません。
- 売上を上げる
- 原価を下げる
売上を上げるか、原価を下げれば、必ず粗利率は上がります。
これは算数の問題ですね。
売上を上げるよりも、原価を下げる方が簡単な話。
売上を上げるよりも、原価を下げる方が簡単です。
理由は以下の通り。
- 売上→過去の積み重ね(いますぐ変えられない)
- 原価→現在の結果(いますぐ変えられる)
売上を上げるために最も大切なのは、「信頼」です。
ブランドとも言えます。
お店の認知度、口コミ、食べログの評価などが売上に大きく影響します。
それらは、1日2日でできるものではなく、何年もかけて育てていくものです。
一方で、原価は今日から変えられます。
目の前のお客様が食べる内容を変えれば、原価も変わるのです。
あくまで例えばですが、
今まで原価率50%出していたハンバーグを、
今日から原価率30%で出せば、原価率は20%下がります。
逆に言えば、粗利率は今日から20%上がります。
もちろん現実はこんなに単純ではありませんが、考え方はこういうことです。
【やりがち】粗利率を上げるためにやってはいけないこと
粗利率を上げるためにやってはいけない事は以下の通りです。
- 客単価を大幅に上げる
- 原価率を細かく計算する
- ポーション(量)を細かく調整する
- 未経験の新メニューを取り入れる
客単価を大幅に上げる
粗利率を上げるためにやってはいけない事1つ目は、「客単価を大幅に上げる」です。
理由は、お客様の満足度が下がるからです。
売上を上げる方法には、
- お客様の数を増やす
- 客単価を上げる
- お客様の来店頻度を上げる
基本的には、この3通りしかありません。
この中で最も簡単にできそうなのが、「客単価を上げる」です。
危険なのは、「単純にメニューの値段を上げるだけで客単価を上げようとする事」です。
メニューの値段を上げれば、客単価は上がるかもしれませんが、
満足度が下がってしまう可能性があります。
満足度が下がってしまえば再来店してもらえないので、
結果的に売上が下がってしまいます。
何も考えずに客単価を上げる事は、危険なことなのです。
原価率を細かく計算する
粗利率を上げるためにやってはいけない事2つ目は、「原価率を細かく計算する」です。
理由は、時間のムダだからです。
昔、すべてのメニューの原価率を1から計算したことがありました。
だし巻き卵の原価を計算するために、
卵、出汁、醤油、などの値段を調べ、1個の原価を計算します。
それを全メニュー分繰り返すのです。
結果、それが活用される事はありませんでした。
原価計算は、ざっくりでOKです。
原価率の計算に時間をかけても、粗利率は上がりません。
もっと大切なのは、結果をみて改善していくことです。
ポーション(量)を細かく調整する
粗利率を上げるためにやってはいけない事3つ目は、「ポーション(量)を細かく調整する」です。
理由は、これも時間のムダだからです。
1メニューにつき、どれだけの食材を使うかに気を使ってもムダになることが多いです。
例えば、サラダを作るときに「レタスが何g」「トマトが何g」「ドレッシング何g」
などと決めても実際に守るのは難しいです。
メニュー数が少ないお店ならなんとかなるかもしれませんが、
メニュー数が多くなってくると厳しいです。
ポーションの調整に時間を割くよりも、メニューを改善していった方が良いです。
未経験の新メニューを取り入れる
粗利率を上げるためにやってはいけない事4つ目は、「未経験の新メニューを取り入れる」です。
未経験の新メニューは、うまくいかないことも多いからです。
原価を下げようと思ったのに、
「作るのが難しくて、人件費が余分にかかった」
「うまく作れなくてお客様の満足度が下がった」
「食材費が思ったより高くて原価が上がってしまった」
という結果になりかねません。
新メニューを入れるのは良いですが、
- 何度も試作をする
- 過去に経験したことがあるメニューにする
- 調理工程がシンプルなメニューにする
こう言った工夫が必要です。
飲食店が粗利率を上げて稼ぐためのロードマップ
飲食店が粗利率を上げて稼ぐための方法は、
「原価が安い商品を、大量に売る」
これにつきます。
ただ、「安いものだけをメニューにして売ればいい」という単純なものではありません。
それだとお客様の満足度を下げるだけです。
戦略的に粗利率を上げましょう。
前提条件:ロスをなくす
粗利率を上げるための前提条件として、ロスをなくしましょう。
「余った食材を捨ててしまう状態」を、ロスと言います。
メニューを削ったり、仕込み量を調整するなりして、まずはロスをなくしましょう。
考え方:フロントエンドとバックエンドを理解する
「フロントエンド商品」「バックエンド商品」という考え方があります。
- フロントエンド商品 = お客様を呼ぶ商品
- バックエンド商品 = 儲けるための商品
です。
マクドナルドで考えると、
「月見バーガー」がフロントエンド商品。
「フライドポテト」がバックエンド商品です。
「月見バーガー」を目当てに来店してもらい、合わせて「フライドポテト」を買ってもらって儲けるということです。
すべてのメニューを原価30%でそろえると、無個性なメニューばかりになります。
なので、メニューにメリハリをつけることです。
フロントエンド商品には、しっかりと原価をかけて本当に良い商品を作る。
その一方で、儲けるためのバックエンド商品もあわせて販売していく。
バックエンド商品に向くのが、原価の安いメニューです。
飲食店が粗利率を上げて稼ぐためのロードマップ
飲食店が粗利率を上げて稼ぐためのロードマップは以下の通りです。
- 原価率が低い商品を知る
- 自店舗の商品で「原価が高いもの」と「原価が低いもの」をざっくり分ける
- 自店舗の商品の出数を調べる
- 出数が多いものは、基本的にそのまま残す
- 出数が少ないものを削る
- 原価が低い人気商品を作る
- 結果を見て、試行錯誤を繰り返す。
原価率が低い商品を知る
まずは、「原価率が低い商品にはどのようなものがあるのか」を知りましょう。
原価を抑えやすいメニューは以下のようなものがあります。
- 枝豆
- フライドポテト
- ポテトサラダ
- もちを使ったメニュー
- 米を使ったメニュー
- 卵を使ったメニュー
- 豆腐を使ったメニュー
- ウーロンハイ、緑茶ハイ
- ハイボール
「原価がほぼゼロの商品を作る」という方法もあります。
今までは捨ててしまっていたような食材を使ってメニュー化するという方法です。
例えば僕のお店もメニューには「鳥もも肉の唐揚げ」という商品があります。
仕込みをするときに鶏皮をはがすのですが、その皮をを捨ててしまっていました。
今考えると、大変もったいないことです。
皮を活用すためにメニュー改善し、鶏皮を炙って食べるおつまみに変えました。
これが意外なヒット商品となり、原価ゼロで売上を作ることができるようになりました。
小さなことですが、その積み重ねが大きな差になります。
お店で捨ててしまっているものがあれば、メニュー化できないか考えてみましょう。
自店舗の商品で「原価が高いもの」と「原価が低いもの」をざっくり分ける
メニューの中で「原価が高いもの」と「原価が低いもの」を分けて把握しましょう。
あまり時間をかけすぎなくていいです。
実際に、メニュー表を目の前に広げてみて見てください。
国産の肉や魚を使ったメニューは、原価が高そう。
野菜の価格が上がっているから、サラダは原価が高そう。
だし巻き卵は、原価が低そう。
こんな感じでOKです。
自店舗の商品の出数を調べる
原価を把握したら、商品の実際の出数を調べます。
レジで記録が残っているところは、出数が調べやすいはずなので1ヶ月のデータを見てみてください。
記録がなければ、体感でOKなので、
「よく出るもの」「普通なもの」「あまり出ないもの」をわけてみてください。
出数の多いものは、基本的にそのまま残す
メニューを変えていきます。
出数の上位30%に入るもの、
もしくは「よく出るもの」に分類されるものは、基本的にそのまま残しましょう。
よく出るメニューは、お客様に支持されているメニューだからです。
フロントエンド商品にあたる部分です。
多少原価がかかったとしても、残す価値があります。
後々、出数が減ってきたら削ってOKです。
出数が少ないものを削る
出数の下位30%以下のものは、思い切って削るか仕込み量を少なくしましょう。
「最悪、売り切れてしまってもしょうがない」と割り切ることです。
メニューを多くしすぎて苦しんでいる飲食店はたくさんあります。
メニューが増えれば増えるほど管理が大変になるし、ロスも増えます。
ムリのないメニュー数で営業するのも大切なことです。
原価が低い人気商品を作る
次は、商品開発です。
「原価が低い」かつ「人気が出そう」な商品を、メニューインします。
上で見た「原価を抑えやすいメニュー」を参考に作ってみてください。
豆腐1つをとっても、
冷奴、揚げ出し豆腐、煮込み、麻婆豆腐など、バリエーションがあります。
味付けやトッピングを工夫すれば幅はさらに広がります。
お客様に出してみて、人気があるようならそのままメニューイン。
ダメなら、改良してみる。
この繰り返しで、原価が低い人気商品を作ることができます。
原価が低い人気商品が増えれば増えるほど、トータルの原価率は下がります。
結果として粗利率が上がるのです。
結果を見て、試行錯誤を繰り返す。
最後は、「結果を見て試行錯誤を繰り返す」です。
長々と説明してきましたが、この試行錯誤が一番大切です。
「原価が低い」かつ「人気が出そう」な商品を作るのは、簡単なことではありません。
メニューインしたら、翌月いきなり粗利率が上がる、という事はめったに起きません。
僕も、粗利率が上がらず長年苦労してきました。
うまくいくようになったのは、試行錯誤の回数を増やしてからです。
思ったような結果にならなかったら、「何が悪かったのか?」を自分なりに考えて改善しましょう。
一歩一歩の改善が、粗利率を引き上げ、儲かる飲食店に近づきます。
今回は以上です。
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